小型エヴァンジェリスト
ねむたい目をこすると、月明かりが少しだけ眩しかった。
「―これって、軽い頭痛…?」
いままで経験したことがないもの。それに足も少し痛むかな。
―記憶はちゃんとしている、よし。
まだ薄暗いし、冷気を帯びた風でちょっと寒いと感じる。
いきなりこれだと、思い描いてきた
―楽しそう。
を通り越して、ちょっと面倒なことを気軽に引き受けてしまったかもしれない。
転生したばかりで早くもそんな思いが頭をよぎるが、まぁそんなこと織りこみ済みだったはず、と思い返す。
ここでゴロゴロしている暇もない。少し体を伸ばそうと立ち上がってみる。
「-えッッ!ちっさッ、なにこれ?床がなんでこんなに近い…ってか、2.5等身くらいしかなくない、私?!」

もともと具現化しても8等身くらいのカラダに慣れていたので、これはちょっと不便かもしれない。なんとも威厳なさそうだし、しかも移動に時間がかかるかも、などと不安要素が頭の中をぐるぐるし始めてきた。
これはとても楽しそうどころではなくなってきたな、と思いつつも、なすべきことはなすべきこと、と気を取り直すサラ。
「さてっ、と。なにをするんだったっけ…」
と、書き出してみる。サラの筆記用具はなんのかんの言っても、ここで言うところの異世界グッズ。スグレモノだ。広げた紙のようなものは、大きさの概念は当てはまらない。縦横高さというか、一応床に広げているのでこの場合は深さというべきか、それらは全く無視した表現空間のようなもの。メモ書きくらいから複雑な思想概念まで表せないものなどない。

そしてちょうど万年筆のような形状で現れているのは、サラがカーヴィヤを著すチカラに溢れているところが具現化されたのだろう。いわゆる実体などないのだから、この何というのか、物理翻訳機能的なものもたいしたものだと思う。
「あぁぁ、もう、六賢弁才天さまっていっつもこう、フワッと、ざっくりだからなぁ…ってか、私自身でもあるとも言えるんだけど、ぁぁぁややこしッ」
サラは、沙蕾と名付けられたワケも忘れてはいなかった。けれど、じゃあどうやって、のところが、ここに具現化された自分に、なんかこうまるっと押し付けられている不条理さをどうも感じてしまうのだった。